古より伝わる「綾子舞」の時を刻む「現地公開」

綾子舞

 

国の重要無形民俗文化財に指定されている新潟県を代表する古典芸能「綾子舞」は伝承地である柏崎市鵜川の女谷で一般公開されます。
「綾子舞」の現地公開は毎年9月第2日曜に行われます。現地公開という言葉には、鵜川の女谷(おなだに)で開催することで、正統な伝承を確認し、新たな一年を刻む気持ちが込められているのでしょうか。

綾子舞は、女性が踊る小歌踊(こうたおどり)と、男性による囃子舞(はやしまい)、狂言(きょうげん)の三つから構成されます。
現在、高原田と下野の二つの座元が伝承していますが、それぞれの座元で、歌やせりふに違いがあります。
現地公開のときも、それぞれの座元が演目の構成を決めて演じます。

 

綾子舞

 

もともと秋祭りの神社の境内で演じ続けることで伝承されてきたので、会場には稲刈りの終わった田んぼが周囲に広がり、秋空のもと、のどかな雰囲気の中に笛や太鼓の音が流れます。
観客は、仮設の舞台の前に陣取り、お菓子やおつまみを持ち込んで秋の収穫を喜びそれまでの疲れを癒します。
そんな姿に接すると地元の人々に愛され、生活の大切な時間として伝承されてきたことがわかります。

綾子舞は、格式を重んじ、芸風を堅く守るために、決められた家の長男だけに継承されてきました。そのため、昭和初期ころまでは、綾子舞を踊るのは男性だけでした。

しかし、集落の過疎化と指導者の高齢化により、伝承の担い手の確保が難しくなりました。
そこで、昭和45年から旧鵜川小学校で、昭和58年から旧鵜川中学校でも子どもたちへの伝承学習が始まりました。
今では、南中学校区の子どもたちや、希望する一般の方たちにも伝承されています。

 

綾子舞

 

現在、新道小学校と南中学校の子どもたちが、学校の枠組みを越えた特設クラブとして伝承学習を行っています。
小学3年生から中学3年生までが参加していて、上級生が下級生を指導したり、励ましたりしながら練習しています。

こうして綾子舞の伝承活動は続けられ、たくさんの綾子舞伝承者が卒業しています。伝承学習がはじまって50年の年月を数えます。
伝承活動を通じて成長した卒業生は、10代から60代へと広がり、その活躍する地域も柏崎から離れて広がっていきます。

伝承500年祭を経て学術的な価値はどんどん高まっています。先人のご苦労がどれほどだったのか、想像することはできませんが、たくさんの方々のご苦労のおかげで伝承がとぎれることなく続いています。

 

綾子舞

 

先人の方々への感謝を忘れず、秋空の下で古から継承されてきた時間をじわ~と感じることができたら、とても素敵だと思います。